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「スマート養殖」で漁業を変えるくら寿司のAI戦略

スマート給餌機を使った「スマート養殖」を漁業者に提供して養殖を任せる「委託養殖」。使用しているスマート給餌機は、水産関連のICT開発を進めるスタートアップのウミトロンが開発したもので、AI が魚の食欲を画像解析することで、給餌の量やタイミングを最適化することができる。社会情勢の影響で、価格高騰が続くエサ代や漁船の燃料費の削減、CO2排出量の削減や環境負荷の低減が期待されている。 くら寿司 また、スマートフォンを活用することで、遠隔地から給餌の様子が確認でき、従来よりも給 餌の効率化、作業量の低減が図れる。 餌をあげるタイミングや量の調整では苦労も くら寿司は2021年11月、「KURAおさかなファーム」を設立した。養殖から販売までのサービスを一貫して漁業者たちに提供するためだ。 「KURAおさかなファームは養殖用の稚魚やスマート給餌機を養殖事業者に提供の上、スマー ト養殖を委託。寿司ネタにできる大きさまで魚を育てていただき、その魚を全量買い取ることで、『クオリティの高い商品の安定供給』と『生産者の方々のリスク低減と収入の安定化』 の両立にも繋げることができると考えています」(岡本氏) しかしAI養殖が簡単に誕生したわけではない。たとえばハマチの養殖はこれまでベテラン漁師の勘に支えられていた。中でも重要なのがえさを与えるタイミングと量だ。魚種によって食べる量や頻度が違っている。 「AIを活用したハマチの養殖というのがこれまで前例がなく、スマート給餌機を使うのも初の試みだったので、エサを食べてくれるのか、当初は心配しました」(岡本氏) 魚種ごとに給仕プログラムを作成していく作業は非常に苦労したという。中でも「餌を上げ続ければいいのか」「ここでやめた方がいいのか」といった微調整は非常に難しかった。 「餌をあげるタイミングやどの程度の餌が消費されているのかといったデータは職人さんたちに送られ、映像もストックしているものを遠隔操作で見ることができます。そのようにして調整してきました」(広報部マネージャー、辻明宏氏) くら寿司 最終的には通常の養殖と遜色のないものができたといい、コスト削減と作業の軽減にもつながっている。ちなみに養殖のコストのうち7、8割がえさ代だといわれているが、ここに大きなメスをいれたことが、大きな成果につながっている。 「AI で解析した『魚の食欲』に応じて給餌することで、従来と比較し、マダイもハマチも餌代を1割削減できました。さらに、スマート給餌機の活用により、毎日生けすに行くという作業が 2~3 日に...