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建設DXで業態転換を目指す創業425年の老舗建設会社

実証実験では50%のコストダウンを実現 実証試験は2021年1月からスタートし、2022年12月時点で、東亜建設工業、東急建設など複数のゼネコンが参加し、結果を発表している。 東亜建設工業はスチールドアなどの生産サプライチェーンでBIMを活用し、「見積・作図承認・スチールドア生産」の各工程で最大50%を削減。研究施設の内装工事でもBIMを活用し専門工場でカットした木材を現場に持ち込み組み立てるプレカット工法を導入し、現場施工時間を最大で20%を削減した。 東急建設は増築工事で、従来工法とBIMデータから選んだ精密プレカット施工を比較検証し、現場施工の生産性(工数)や廃材・CO2の排出量などを実数実測のうえ数値化。LGS(軽量鉄骨)や石膏ボードの貼り作業時間が30~50%減少、発注数量に対する現場廃材量が4.6%削減した。さらにLGSや石膏ボードのプレカット施工により、現場での高速カッター使用回数が4割減った。その結果、騒音の未発生や高速カッター・工作用カッターの誤作動による労災防止の効果が確認された。 野原グループはこうした成果が評価され、2022年度の国土交通省のBIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業にも採択された。 さらに竹中工務店、大成建設、大和ハウス工業、清水建設など20社が加わり、実証試験が続けられている。 「日本のBIMの課題は、発注者が建物の情報を、竣工後の運用や改修に生かすのかという発想がまだ薄いことです」(野原氏) ビルドアップは2024年夏から内装(壁床天井)向けのサービスを皮切りに本格的に開始される。 「今思い描いているサービス群の網羅完了は2029年、30年までかかる見込み。ビルドアップの対応可能な建設プロジェクトは公共案件も民間も区別なく、ゼネコンが使いたいといえば建物用途に限定はない」(野原氏) さらに将来は41万点以上の建材を当日・翌日出荷という短納期で対応できるサービスとなっているEC事業「アウンワークス」との連動も検討されている。 「ゼネコンを中心に時間を追うごとに状況が変化しているので大きな目標を掲げるまでに至っていないが、まずは建設DX推進のプラットフォームであるビルドアップでやり取りされる建設プロジェクトの総額1兆円を一つのマイルストンにしたい」 山﨑氏は将来の目標についてこう語る。 こうした野原グループの取り組みについてBIMプロセスイノベーションの代表でBIM Evangelistの 伊藤久晴氏は次のように語っている。 「野原グループは先導的な動きをされていますが、日本では、未だに2次元での業務を主体とし、後追いでBIMモデルを作っている企業もあります。また、BIM標準が異なるために、同じソフトウェアであっても、企業ごとにBIMモデルが違うという状態になっています。これらの事情から、上流の設計・施工のBIMモデルの品質にバラツキが出ています。これを解決し、連携における情報の流れを最適化することが、このプロセスの一つの課題です。この取り組みにより、この建材情報を含めた建物全体の情報をマネジメントすることができれば、施設の運用にも使える高い価値を持った情報に変えてゆくことも可能となるでしょう。BIMモデルは、そのデジタル化された情報の連携によって、価値を高めることができます。野原グループのように、ゼネコンからのBIMモデルを元に、建材商社として、独自の技術で建材のデジタル情報に変え、それをサプライチェーンの中で活用する取り組みは、あるべきビジネスモデルの姿と言えるものです。今後の日本のBIMの展開の中でも、重要な取り組みと考えられます」 (more…)